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JR東日本 旅の彩150選

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旅の彩150選コラム

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vol.03 
駅弁150年ヒストリー

鉄道旅の楽しみの一つは、何といっても駅弁! 誕生からこれまでについてのトピックを、駅弁の歴史に詳しい一般社団法人日本鉄道構内営業中央会事務局長の松橋信広さんにおうかがいしました。

鉄道とともに誕生、そして発展

駅弁の誕生については諸説ありますが、一般的には明治18(1885)年に宇都宮駅(栃木県)で発売された「おにぎり弁当」が最初といわれています。

「上野〜宇都宮間に日本鉄道(現在のJR東北本線)が開通した際、宇都宮の旅館<白木屋>が鉄道当局に依頼されて考案したもので、中身はおにぎり2個、たくあん2切れだったといわれます」と、一般社団法人日本鉄道構内営業中央会事務局長の松橋信広さん。
鉄道が全国に延伸し、夜行列車も運行されるようになると、乗車時間の長時間化に伴って駅弁のニーズはますます高まります。

「明治22(1889)年、姫路駅(兵庫県)で<ひさご(現・まねき食品)>という茶屋が『汽車辨當』を売り出しました。経木の箱にご飯とおかずを詰めた二段重タイプで、これが幕の内弁当の始まりといわれています」

明治30年代になると、各地の食材を活かしたご当地駅弁が次々に現れます。

「山北駅(神奈川県)の『鮎寿し』や、小田原駅(神奈川県)の『小鯵押寿司』、静岡駅(静岡県)の『鯛めし』、宮島口駅(広島県)の『あなごめし』などが発売され、駅弁にバリエーションが見られるようになっていきました」

日本で初めて、サンドウィッチの駅弁が大船駅(神奈川県)で売り出されたのもこの頃のこと。ハムを挟んだシンプルなサンドで、当時は都会のレストランでしか食べられなかった料理ということもあって、大人気となりました。おにぎりに始まり、幕の内弁当からバリエーション豊かな各種駅弁へ。今につながる駅弁の基本形は、明治時代末期にはすでにできあがっていたのです。

「その後、大正から昭和初期にかけて駅弁の進化を促した出来事には、軍弁(軍のための弁当)の供給がありました。大量に作りながらある程度のバリエーションもつけて、とニーズに応えるうち、駅弁の供給能力が磨かれたのではないかと思います」

おにぎりの写真

鉄道とともに始まった駅弁。
最初はおにぎりだった。

おにぎりのイラスト おにぎりのイラスト

レジャーブームの到来と駅弁

昭和に入り、戦後の高度成長期を迎えるとレジャーブームが起こります。鉄道で旅行に出かける人も増え、駅弁売り場は大盛況。駅弁には、冷めてもおいしい工夫など、ただお腹を満たすだけではない付加価値も求められるようになりました。横浜駅(神奈川県)の『シウマイ弁当』や横川駅(群馬県)の『峠の釜めし』など、おなじみの駅弁が発売されたのもこの頃のことです。
そんなにぎやかな時代の空気を感じられる資料の一つが、掛け紙。その名の通り駅弁の容器を包む紙のことで、始まりは明治時代に遡ります。

「土地の名所案内や観光情報が盛り込まれているものをはじめ、時には車内マナーを訴えるものも。掛け紙には、時代の空気が映し出されています」と松橋さん。

例えば、昭和40年代の掛け紙を見てみましょう。(a)は昭和47(1972)年に岩手県の斎藤松月堂弁当部が販売していた「特製お弁当」。赤い地色の中央に囲みを設け、その中に中尊寺金色堂や厳美渓など地元の名所の案内と路線図を配置しています。明治時代から一ノ関駅で構内販売の歴史を持つ老舗らしい、シンプルなデザインです。

bは千葉県の南総軒が昭和48(1973)年に販売していた「お弁当」。海が近い勝浦駅(千葉県)周辺の様子がよくわかる案内イラストには、当時人気があったリゾート施設、行川アイランドも描かれていて時代を感じます。

Cは昭和49(1974)年、静岡県は東海軒の「お弁当」。海の青と陸の黄が鮮やかなデザインで、富士山や駿府城といった名所が楽しげに描き込まれています。国鉄(当時)のキャンペーンロゴ「DISCOVER JAPAN」も添えられています。

斎藤松月堂弁当部の「特製お弁当」の掛け紙
南総軒の「お弁当」の掛け紙
東海軒の「お弁当」の掛け紙

昭和40年代の掛け紙。
それぞれに趣向を凝らして。

駅弁の今とこれから

近年は新商品の開発だけでなく、駅弁をめぐるイベントやグッズ販売なども積極的に行われています。

その1つが、海外での駅弁販売。平成28(2016)年3月から6月にかけて、仏パリのリヨン駅構内に特設売店を設けて販売されました。ラインナップは、幕の内弁当、おにぎり弁当、助六弁当など計5種類。盛り付けや掛け紙など細部にわたる美しさとおいしさが評判を呼び、当初は5月までの販売予定が1カ月近く延長されることに。さらに、2年後の平成30(2018)年にも再度の出店となるほどの人気でした。

また、令和4(2022)年4月10日には、日本初の駅弁に着想を得た「おにぎり駅弁」の販売が行われ、一折の購入につき1枚、各社の地元観光スポットを紹介した「駅弁カード(全21種類)」が封入されました。ちなみに、「弁」は4と十の組み合わせ、「当」は10に通じるということから、4月10日は「駅弁の日」に制定されています。このほか、令和元(2019)年から販売されている駅弁フィギュアのカプセルトイ(いわゆる「ガチャ」)も、第3弾まで続く(2022年7月現在)人気など、駅弁をめぐる話題には事欠きません。

「駅弁は令和2(2020)年に、誕生から135年を迎えました。近年はデパート催事での販売やお取り寄せ、冷凍駅弁の登場など、自宅で味わえる機会も増えていますが、やっぱり基本は旅の友。これからも鉄道旅に寄り添い、旅の記憶に残る存在であり続けるよう、盛り上げていきたいと思います」(松橋さん)

大好評だった、パリでの駅弁販売。

駅弁のフィギュア。細部まで作り込まれている。
右/新潟県・雪だるま弁当(第1弾)
左/山梨県・そば屋の天むすとお茶土瓶(第2弾)

昭和63年に認定されたマーク。
「日本鉄道構内営業中央会」認定の
駅弁に表示されている。

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