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JR東日本 旅の彩150選

ABOUT TABINO IRODORI

旅の彩150選コラム

TABINO IRODORI COLUMN TABINO IRODORI COLUMN

vol.06 
おみやげは、
日本独自の文化?

日本のおみやげ文化は、どんなところに特徴があるのでしょう。海外にも同様の習慣はあるの? 日本のおみやげの歴史や文化的側面に詳しい、川崎市市民ミュージアムの学芸員、鈴木勇一郎さんにうかがいました。

ユニークな日本のおみやげ文化

観光地へ出かけると、あちらこちらで目に入るおみやげ店。旅行客がこんなにもおみやげショッピングに興じるのは、日本だけ? そもそも、おみやげは日本独自の文化なのでしょうか。

「おみやげの英訳は<souvenir(スーベニア)>。どちらも旅先で買う品物のことですが、二つは厳密には同じものではありません」と、鈴木勇一郎さん。

「日本のおみやげの大きな特徴は、その多くが帰宅後に周りの人に配るものであり、食品ということ。これは『自らの旅(多くの場合、寺社への参詣)の証を分かつ』という、おみやげの起源にも通じるものがあります。一方でスーベニアは、ほとんどが自分のための旅の思い出。ゆえに、工芸品など食品以外のものが多くなります」

2001年には、そんな日本と欧米のおみやげ文化の違いに着目した企画展示『現代日本のおみやげ』が、英国・ロンドンの大英博物館で開催されました。また「日本語と英語の旅行ガイドブックを比べると、おみやげに関する情報量は日本語の方が圧倒的に多く、おみやげへの熱量の差がわかります」と鈴木さんは話します。

配りやすいよう小さな個装で、食品で、旅の証を分けるもの。そんな「日本的おみやげ」の最たるものが、事前オーダーのおみやげです。例えば、ハワイみやげのナッツを機内やネットでオーダーして宅配してもらうシステム。おみやげに求められる機能を満たしていて、しかも便利で、実に日本的です。
「おみやげは日本独自の文化ではないものの、日本での有り様はかなり特徴的だと思います」

日本のおみやげは「配る」もの。
 だから個装が好まれ、
今も昔も変わらず根強い人気を誇る。 

チョコスチームケーキ8個入

JR東日本おみやげグランプリ 2020年
南関東エリア 銀賞
チョコスチームケーキ8個入 1,650円(税込)

東京都・Ura(銀座コージーコーナー)

群馬県アカシア蜂蜜のラングドシャ24個入

JR東日本おみやげグランプリ 2019年 
部門賞 食品部門 金賞
群馬県アカシア蜂蜜のラングドシャ24個入 
2,245円(税込)/群馬県・つつじ庵

地方の名物が全国区のおみやげに

日本各地には数多くの名物、特にお菓子が存在します。例えば郡山(福島)の薄皮饅頭や、伊勢(三重)の赤福餅、京都の八ツ橋、山梨の桔梗信玄餅など、古くから伝わり、今なおメジャーなおみやげとして人気を博しているものは少なくありません。

さまざまな名物菓子を、明治44(1911)年に品質や価格の面から評価したのが、鉄道院(鉄道行政を管轄する中央官庁)でした。

「駅の構内で販売していたお菓子を対象に、代金に相当する味やパッケージであるかを調査し、その評価を発表しました。調査のいちばんの目的は、粗悪品を締め出して商品の品質を安定させることでしたが、結果的には、良い評価を得た商品の知名度につながったと考えられます」

名物菓子の品質と知名度アップにおいてさらに大きな役割を果たしたのが、明治期に東京、京都、大阪で計5回開催された内国勧業博覧会でした。

「博覧会は、産業の発展を目的として行われた、近代国家の象徴ともいえるイベント。各地から一堂に集められた産品をジャンルごとに展示し、優劣を審査する催しです。これによって出品者たちの競争心が刺激され、品質の向上が促されました。しかも、博覧会に出品されるだけでも大きな宣伝効果があったため、地方の名物菓子が全国区の知名度を得ることができたのです」

こうして広く知られるようになった名物菓子は、やがて鉄道の発展に伴い、その土地を旅した証のおみやげとして喜ばれるようになっていきました。

全国区のおみやげとなった名物菓子は
今も変わらず人気を博している。

柏屋薄皮饅頭こしあん10個入り

JR東日本おみやげグランプリ2019年
特別賞 
旅先の思い出として送りたいおみやげ賞
南東北エリア 
柏屋薄皮饅頭こしあん10個入り 
1,350円(税込)
/福島県・柏屋
(※10月より価格変更の予定あり) 

桔梗信玄餅6個布袋入り

JR東日本おみやげグランプリ 2017年
部門賞 お菓子部門 金賞 
桔梗信玄餅6個布袋入り 1,095円(税込)
/山梨県・桔梗屋

おみやげのスーベニア化

「おみやげの主流が食べ物に移った後も、モノのおみやげが廃れたわけではありません。昭和30年〜50年代には旅行先の土地名が刷り込まれたペナントやキーホルダーが流行し、人に配るおみやげとしても、自分用(スーベニア)としても人気を誇っていました。しかし、こうした傾向は昭和の終わりとともに衰えていきます」と鈴木さん。

背景にあるのは、日本人の旅スタイルの変化。かつては職場や地域などでの団体旅行やパックツアーで出かける人が多かったのに対して、近年はすっかり個人旅行が定着してきました。さらに、観光メインというより日常の延長的な旅行をする人が増え、おみやげ選びも変わってきたといいます。

「旅行先の土地で作られ、使われている生活雑貨や日用品が、おみやげとしてクローズアップされるようになりました。例えば器や、かご、ざる、木工製品といった道具類。これらは“旅行の記念品”として作られたものではありませんが、土地に根づいたモノであり、旅に出かけた証という意味では、やはりおみやげの起源に通じる要素を備えています。自分のために買うケースがほとんどということも特徴で、おみやげのスーベニア化といえそうです」

日本のおみやげ的でありながら、スーベニア的でもある昨今のおみやげ。一方では、人に配るお菓子などのおみやげもまだまだ健在です。

「おみやげ文化の変化は、社会の動きに伴うもの。これからも、日本の社会を反映しながら変化を続けていくことと思います」

旅行先の生活雑貨や工芸品が
おみやげとして脚光を浴びるように。

曲げわっぱ小判弁当(小)

JREMALL内 
東北MONOWEBSHOP・秋田MONO 
曲げわっぱ小判弁当(小)
9,500円(税込・送料込み)
/秋田県・大館工芸社 

仙台七夕こけし箸置

JREMALL内 
東北MONOWEBSHOP・宮城MONO 
仙台七夕こけし箸置
3,350円(税込・送料込み)/宮城県・瀬戸屋

鈴木勇一郎

鈴木勇一郎

1972年和歌山県生まれ。青山学院大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(歴史学)。川崎市市民ミュージアム学芸員。著書に「おみやげと鉄道」など。

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