ライター:桜木 健(現役東大生コーチ / 逆転合格コンサルタント)
偏差値35から2年で東大理科一類に現役合格。自身の経験と脳科学・認知心理学に基づいた「逆転合格メソッド」で、多くの受験生の悩みを解決。頼れる兄貴分として、科学的根拠に基づいた効率的な勉強法やモチベーション維持の秘訣を発信中。
「志望校? うーん、まだ特に…。とりあえず、今の偏差値で行けそうなところかな」
面談でこう答える君の気持ち、痛いほどわかる。何を隠そう、中学時代の僕も全く同じだったからだ。
こんにちは!現役東大生の桜木健です。中学2年生の三者面談、先生に「志望校調査票、どうする?」と聞かれた僕は、焦って模試の結果とにらめっこ。「ここならA判定だな」と、偏差値だけで適当な高校の名前を書いて提出した。親も先生も、特に何も言わなかった。
でも、その「とりあえず」で書いた高校のオープンスクールに行った日、僕は衝撃を受けたんだ。校舎は綺麗だったし、先生の説明も丁寧だった。でも、そこにいる生徒たちの雰囲気、部活動の様子、すべてが自分にしっくりこない。直感的に「俺の居場所は、ここじゃない」と感じてしまったんだ。
あの日の強烈な違和感が、僕の高校選びの原点になった。高校選びは、単なる「次の進学先」を決める作業じゃない。これから3年間、君が笑い、泣き、悩み、成長する、かけがえのない「青春の舞台」を選ぶことなんだ。
偏差値というたった一つの「点」で、君の3年間を決めてしまっていいのか? 絶対にダメだ。後悔しないためには、「点」ではなく、これから紹介する3つの「視点」で、君だけの最高の舞台を見つけ出す必要があるんだ。さあ、僕と一緒に、後悔しない高校選びの旅に出よう!
視点1:「今の自分」を知るための自己分析の視点
高校選びの旅の最初のステップは、遠くの地図を眺めることじゃない。今、君が立っている場所、つまり「自分自身」を徹底的に知ることだ。なぜなら、自分に合わない学校を選んでしまう原因のほとんどは、自己分析不足にあるからだ。
ステップ1:自分の「好き・嫌い」「得意・不得意」を書き出す
まずは、ノートを1ページ、真っ白な紙を用意してほしい。そして、思いつくままに、自分の「好き・嫌い」「得意・不得意」を書き出してみよう。ポイントは、教科のことに限定しないことだ。
好き・得意 | 嫌い・不得意 |
---|---|
数学の問題が解けた時の達成感 | 単純な暗記作業 |
みんなでワイワイ何かを企画すること | 一人で黙々と作業すること |
活気があって賑やかな場所 | 静かすぎるところ |
新しい友達を作ること | 人前で発表すること |
歴史小説を読むこと | 英語の長文読解 |
こんな風に、勉強、性格、好きな場所、人との関わり方など、あらゆる角度から自分を分解していくんだ。これは、君という人間の「取扱説明書」を作る作業。この後の高校選びで、君だけの「最高の選択」をするための、何より重要なコンパスになる。
ステップ2:自分の「性格タイプ」を客観視する
次に、書き出したリストを眺めながら、自分がどんな性格タイプなのかを客観的に見てみよう。例えば、こんなタイプに分けられるかもしれない。
- コツコツ努力型:真面目に宿題や課題に取り組める。校則が厳しめで、先生が手厚くサポートしてくれる環境が合うかも。
- 短期集中型:追い込まれるとすごい力を発揮する。自由な校風で、自分のペースで学習を進められる環境が合うかも。
- リーダータイプ:文化祭や体育祭で中心になるのが好き。生徒会活動や行事が盛んな学校で、リーダーシップを発揮できるかも。
- 探求者タイプ:好きなことにはとことんのめり込む。特定の分野に特化したコース(理数科、国際科など)がある学校が合うかも。
もちろん、綺麗に分類できるわけじゃない。でも、「自分はどっちかというとこっちかな?」と考えてみることで、どんな学校環境なら自分の良さを伸ばせそうか、イメージが湧いてくるはずだ。
ステップ3:自分の「学力」という現在地を正確に把握する
自己分析の最後は、多くの人が一番気にする「学力」だ。模試の偏差値や学校の内申点。これらは、君の現在地を示す重要なデータだ。でも、絶対に忘れないでほしいことがある。
偏差値や内申点は、君の価値を決めるものじゃない。あくまで、ゴールまでの距離を測るための「目盛り」にすぎないんだ。
A判定が出たら油断するな。E判定が出ても絶望する必要は全くない。大切なのは、その結果を見て「じゃあ、これからどうするか?」を考えることだ。苦手な科目はどこか、どの単元で点数を落としているのか。それを冷静に分析し、次のアクションプランを立てるための材料として使うんだ。
この3つのステップで「今の自分」を深く理解すること。それが、後悔しない高校選びの、最も確実で、最も重要な土台となるんだ。
視点2:「未来の自分」を想像するための逆算の視点
「今の自分」がわかったら、次は視線を上げて「未来の自分」を想像してみよう。多くの生徒が、高校合格をゴールだと考えてしまう。でも、それは大きな間違いだ。高校はゴールじゃない。君の壮大な人生の旅における、重要な「経由地」にすぎないんだ。
ステップ1:ぼんやりとした「夢」や「興味」を言語化する
「将来の夢なんて、まだわからないよ」
そう思う君、それでいい。今、明確な夢を持っている人の方が少ないんだから。ここでやるのは、立派な夢を見つけることじゃない。君の心の中にある、ぼんやりとした「好き」や「興味」の種を、言葉にして掘り起こす作業だ。
もう一度、ノートを開いて書き出してみよう。
- 「ゲームが好き。作る側になったら面白そう」
- 「困っている人を助ける仕事って、かっこいいな」
- 「海外で働いてみたい。英語を話せるようになりたい」
- 「綺麗なもの、デザインを見るのが好き」
どんなに些細なことでもいい。誰かに笑われるようなことでも構わない。これは、君の未来の可能性を探る宝探しなんだ。この中に、君の人生を懸けて追いかけたい「何か」が眠っているかもしれない。
ステップ2:夢から逆算して「必要な学び」を考える
宝の種を見つけたら、そこから逆算して、高校でどんな学びが必要になるかを考えてみよう。例えば、こんな風に。
- ゲームクリエイターになりたい → 情報学部や工学部のある大学かな? → じゃあ、高校では理系、特に数学や物理を頑張らないと! → 理数系のコースがある高校がいいかもしれない。
- 国際的な仕事がしたい → 外国語学部や国際関係学部かな? → 高校のうちから英語に力を入れたい! → 国際交流が盛んだったり、英語に特化したコースがある高校を探してみよう。
このように、未来の自分から現在に向かって、進路を逆算して考えるんだ。そうすると、ただ「偏差値が高いから」という理由ではなく、「自分の夢に近づくために、この高校で学びたい!」という、熱い志望動機が生まれてくるはずだ。
ステップ3:大学進学実績と「指定校推薦」という選択肢
未来の進路を考える上で、高校の「大学進学実績」は重要な情報だ。でも、ここでも注意が必要。ただ有名大学の合格者数が多いから、という理由だけで飛びついてはいけない。
見るべきポイントは、「現役での進学率」や「自分と同じくらいの学力層の生徒が、どんな大学に進学しているか」だ。浪人を含めた数で稼いでいる学校もあれば、一部のトップ層だけが実績を出している学校もある。
そして、もう一つ、絶対に知っておいてほしいのが「指定校推薦」という制度の存在だ。これは、大学が特定の高校に対して推薦枠を与え、その高校の校内選考を通過すれば、ほぼ確実に合格できるという、まさに「隠れた武器」なんだ。
指定校推薦の枠は、高校と大学の長年の信頼関係で成り立っている。つまり、その高校の先輩たちが、真面目に勉強し、大学でも活躍してきた証なんだ。もし君が行きたい大学の学部が決まっているなら、その大学の指定校推薦枠を持っている高校を探す、というのも極めて有効な戦略になる。この情報は、高校の公式ホームページや、塾の先生が持っていることが多いから、ぜひ積極的に調べてみてほしい。
視点3:「最高の3年間」を送るための環境の視点
最後の視点は、君が3年間を過ごす「環境」だ。どんなに素晴らしいカリキュラムがあっても、どんなに高い進学実績があっても、君自身が「この場所が好きだ」「ここで頑張りたい」と思えなければ、最高の3年間にはならない。君は、どんな環境で成長したい?
チェックポイント1:校風と雰囲気
学校には、それぞれ独自の「色」がある。校則が厳しく、服装や頭髪もきっちり指導する学校もあれば、生徒の自主性を重んじ、自由な雰囲気の学校もある。どちらが良い悪いではない。君がどちらの環境で、より自分らしくいられるか、という問題だ。
この「肌感覚」は、パンフレットやウェブサイトだけでは絶対にわからない。だからこそ、オープンスクールや文化祭には、絶対に足を運んでほしいんだ。そこにいる先輩たちの表情、先生と生徒の距離感、掲示されているポスターの雰囲気。五感をフルに使って、その学校の「空気」を感じ取るんだ。「あ、ここの雰囲気、好きだな」という直感は、偏差値よりもずっと雄弁に、君とその学校の相性を教えてくれる。
チェックポイント2:通学時間とアクセス
見落としがちだけど、非常に重要なのが「通学時間」だ。ある調査では、理想的な通学時間は片道1時間以内だと言われている[1]。往復で2時間。もしこれが30分になれば、毎日1時間、3年間で1000時間以上の時間を生み出すことができる。その時間で、君は何ができる?
もちろん、通学時間が長くても、その時間を「スキマ時間」として有効活用できれば問題ない。僕も電車の中で単語帳を何周もした。大切なのは、その時間を「無駄な時間」と捉えるか、「貴重な勉強時間」と捉えるか、という君の意識だ。自分の家からのアクセス、電車の混み具合なども含めて、リアルな通学をシミュレーションしてみよう。
チェックポイント3:部活動・行事・施設
高校生活は、勉強がすべてじゃない。部活動に青春を懸けること、文化祭や体育祭で仲間と一つのものを作り上げる経験、これらもまた、君を大きく成長させてくれるかけがえのない宝物だ。
自分が入りたい部活はあるか? その活動は盛んか? 文化祭や体育祭は、どんな雰囲気で盛り上がっているか? 図書館や自習室、体育館やグラウンドなどの施設は充実しているか? 勉強以外の「青春」を彩る要素が、君のモチベーションを支え、結果的に勉強への集中力も高めてくれるんだ。
チェックポイント4:公立か私立か、学費の問題
最後に、少し現実的な話をしよう。学費の問題だ。一般的に、公立高校よりも私立高校の方が学費は高くなる。これは、君一人の問題ではなく、君を支えてくれる家族の問題でもある。
「私立に行きたいけど、家に迷惑はかけられない…」
そう思うなら、まずは正直に保護者の方と話し合ってみよう。そして、奨学金制度や特待生制度について調べてみるんだ。成績優秀者に対して、入学金や授業料が免除される制度を設けている私立高校はたくさんある。経済的な理由だけで、君の可能性を狭める必要は全くないんだ。
まとめ:さあ、君だけの「最高の志望校」を見つける旅に出よう
ここまで、後悔しない高校選びのための3つの視点について話してきた。もう一度、確認しよう。
- 「今の自分」を知るための自己分析の視点:自分の好き嫌い、得意不得意、性格、そして学力という現在地を直視する。
- 「未来の自分」を想像するための逆算の視点:ぼんやりとした夢から逆算し、必要な学びや進学実績を考える。
- 「最高の3年間」を送るための環境の視点:校風、通学時間、部活動など、自分が心から「ここで過ごしたい」と思える環境かを見極める。
偏差値は、たくさんある物差しの中の一つにすぎない。その一つの物差しだけで、君の価値ある3年間を測ってはいけない。
この旅に、「唯一の正解」はない。君がこれらの視点を持って真剣に悩み、考え抜き、「ここで成長したい!」と心から思える場所。それが、君にとっての最高の志望校だ。
さあ、今日から情報収集という冒険に出かけよう。気になる高校のホームページを隅々まで読み、オープンスクールに申し込み、塾や学校の先生に話を聞きに行くんだ。
君の高校選びという旅が、未来の君を創る、最高にエキサイティングなものになることを、心から応援している!
参考文献
[1] エディック・創造学園. (2025). 高校の志望校の決め方|失敗しないための7つの視点. https://www.edic.jp/column/article/74.html
[2] 明光義塾. (2021). 後悔しない高校の選び方とは?高校選びの考え方とチェックポイント. https://www.meikogijuku.jp/meiko-plus/entrance-exam/high-school-entrance-exams/choose-high-school.html